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2015年11月17日

ノーベル生理学・医学
世界を救ったエバーメクチンの発見

 今年のノーベル生理学・医学賞では日本人の大村智先生が受賞されました!授賞理由は「イベルメクチン」という薬がアフリカで広がっている寄生虫による感染症を治すことができ、大勢の人々を救ったことです。このイベルメクチンは、大村先生が静岡県のゴルフ場で採取した土から発見した微生物が産生する物質「エバーメクチン」を改良して作った薬です。

 ところで、皆さんは新薬がどのように作られるかご存知でしょうか?私が講義で習った限りでは、新薬は一般的に次の流れで作製されるとのことです。
① 基本となる化学構造の探索
② 一部の化学構造の変換
①、②を経て作製された薬は、この後、効果や副作用について詳細に検査されます。

①基本となる化学構造の探索

身近な例を挙げて説明します!例えば、あなたが「壁ドン」ロボットを作るとしましょう。ロボットが壁ドンをするとき、必要な部位は胴体と腕です。極端に言えば、「壁ドン」の機能を果たす上では、外見はどうでもいいのです。図1の左に示したターミ○ーターのロボットでも壁ドンができれば、「壁ドン」ロボットとして成り立ちます。これと同じように、感染症に対して治療効果を発揮するのは薬を構成する化合物の基本となる化学構造です。(※「基本となる化学構造」とは、今回の場合は、感染症に対し、治療効果を発揮する部位と捉えてください。)

②一部の化学構造の変換

しかし、「壁ドン」ロボットの顔をイケメン俳優のシュワルツェネッガーさんの顔に変換すると、女の子は、さらにメロメロになるでしょう(笑)(図1)


図1

 これと同じように、エバーメクチンも基本となる化学構造をできるだけ大きく変えずに一部の化学構造を変えることで、感染症に対し、より効果を発揮するイベルメクチンが作製されました。(図2)


図2
※化学構造は分かりやすく説明するために簡略化した。
実際のエバーメクチンの構造はもっと複雑である。

創薬(=新薬の開発)の研究においては、先述した「①基本となる化学構造の探索」が重要と言われています。エバーメクチンが発見されなかったら、そもそもイベルメクチンも作られなかったからです。大村先生は、東京理科大学大学院時代に身に付けた「化学構造の決定(どんな化学構造をしているか解析すること)」が大の得意だったので、世界中から重宝されていたそうです。その大村先生の技術がエバーメクチンを発見する上で大きな原動力になり、今回の受賞につながったのかもしれませんね!




---------------------------------------執筆者----------------------------------------

 ふっく
 大学生

 生物について勉強中.
 なぜかマッドサイエンティストと
 呼ばれてるのですよ,フフフ
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